【感想】「億男」3億円の先にあるもの
川村元気さんの「億男」という本が好きです。
この本は主人公の「一男」が宝くじで「3億円」を当てるところから物語が始まります。
「お金と幸せの答え」とは何か?
それを大学時代のかつての親友「九十九(:つくも)」に相談しに行ったところ…
九十九は3億円を持って姿を消してしまいました。
「失われたお金」と「お金と幸せの答え」を探すべく、一男は必死になって九十九の周りの「億男」たちを訪ね歩いていきます。。
ストーリー全体が落語の「芝浜」になぞらえて作られており、何度も読み返してしまう名作です。
この本の中にこんな言葉があります。
「僕らは何が欲しいか分からずに欲しがったり、失ったりしている。皆が必死になって書き出している夢。世界一周。大きな家。幸せな家族。でも行きたい場所なんてどこにもないのだ。ここではないどこか、を求めているだけ。お金がそれら茫洋とした夢や欲望に、姿かたちを与えてくれると期待しているだけなのだ。」(p166)
まさにその通りだと思います。
「もし今、3億円が当たったら何がしたいですか?何が欲しいですか?」
この質問に対して"具体的に即答"できる人はごくわずかだと思います。
私たちは常に「今は持っていない何か」「ここではないどこか」を求めています。
だから「お金さえあれば」という思いのもとにお金にすがってしまいます。
幸せってなんだろう…
とても難しい問題ですよね。
この本の中にはその答えとなるこんな言葉もあります。
「僕たちを幸せたらしめているものは何か。
僕たちの生を繫ぎ止め、明日へと生かすものとは何か。
それは柔らかいバスタオル、風に揺れるカーテン、ベランダではためく洗濯物、並んだ歯ブラシ。焼きたてのパン、甘いリンゴ、入れたての珈琲。一輪のチューリップ、笑顔の家族写真、心地のよい音楽。
そのどれもが、お金で買えるものかもしれない。けれども、それとともにある幸せは、誰かと一緒でなければ手に入れることはできない。ひとりでは難しい。誰かと共有していなければ。その幸せな、ひとときを。」(P220)
結局、幸せとは「何を手に入れるのか」「どこに向かって歩くのか」ではなく、「誰と一緒にその時間を共有するのか」が全てです。
私たちが人である以上、幸せを運んできてくれるものは「人」でしかないわけですね。
お金のために人を蹴落とす人生、人を騙してお金をむしり取る人生、家族を犠牲にしてまで仕事にのめり込む人生、、
その人生の先に幸せはありません。
豊かな日本にいるからこそ、幸せの定義を再確認してみることも大切だと思います。
「億男」ぜひ読んでみてください。